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国立台湾美術館所蔵 台湾の国宝「甘露水」日本上陸!「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」が東京藝術大学で開催

2024.9.6-10.20 @日本 東京藝術大学大学美術館

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黃土水
9月6日に東京藝術大学にて開催される「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」は、国立台湾美術館と東京藝術大学の共同企画による国際展覧会であり、20世紀初頭の台湾と日本の芸術家による58点の作品を集結させ、100年前の東亜美術の発展を再現します。会期は9月6日から10月20日までです。
国宝が日本で安全に展示されるために、国立台湾美術館はまず「甘露水」の輸出梱包を最高水準の安全仕様によってオーダーメイド設計し、国宝やその他の展示作品が会場の環境に適応するのに十分な時間を与えるため、日本に到着後48時間は展示スペースに安置し、本日開梱され、良好な状態であることが確認されました。東京藝術大学は、会期中の国宝の安全を確保するため、展示に関わる動線、安全管理、運搬、会場の温湿度管理、作品展示台の固定などの対策を講じ、厳重な態勢で臨んでいます。

黃土水〈甘露水〉,1919。大理石。170 x 77 x 35.5 cm。文化部所蔵、国立台湾美術館により管理。文化部は2023年2月14日、文授資局物字第11230014541号を公告し、『甘露水』を「国宝」に指定した。(国美館提供)

国立台湾美術館と東京藝術大学大学美術館が共同企画した特別展「黄土水とその時代――台湾初の西洋彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」が、6日に開幕し、日本メディアや芸術関係者、来場者から高い評価を受けています。毎日新聞は、開幕1週間前に「台湾彫刻の幻の傑作 所在不明60年、東京芸大に『里帰り』」と報じ、開幕当日には「幻の「甘露水」、100年の軌跡 台湾人彫刻家・黄土水の傑作、日本に」と続報を発表。これらのメディアプロモーションの影響もあり、開幕からすでに約1,200名の来場者を記録しています。

海外初の展覧会「⻩⼟⽔とその時代 ―台湾初の洋⾵彫刻家と20 世紀初頭の東京美術学校」を開催

9月6日に東京藝術大学にて開催される「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」は、国立台湾美術館と東京藝術大学の共同企画による国際展覧会であり、20世紀初頭の台湾と日本の芸術家による58点の作品を集結させ、100年前の東亜美術の発展を再現します。

国立台湾美術館は、1年以上前から東京藝術大学と緊密な連携をとりながら、「甘露水」の海外展の準備を進めてきました。「国宝及び重要古物の輸送取扱規定」に基づき、今年3月に東京藝術大学は展示物貸出国の日本における裁判権または差押免除に関する保証文書を取得後、5月には国立台湾美術館が文化部文化資産局に申請手続きを行い、今年6月に文化資産局が招集した特別チームによって審査され、全会一致で「甘露水」の海外展が決定しました。

2018年より文化部の「台湾美術史の再建」プロジェクトが推進されて以来、芸術家・黄土水の作品や関連史料が次々と発掘されています。なかでも1921年に第3回帝展に入選したことのある「甘露水」は、1958年より所在不明となっていましたが、2021年に奇跡的に発見されました。この作品は張鴻標医師の家族によって長い間保管されてきましたが、このたび国に返還し、国立台湾美術館に収蔵され、2023年2月に国宝に指定されました。

本展は、2023年3月に国立台湾美術館で「台湾の土、自由の水:よみがえる黄土水いのちの芸術」を開催後、国宝「甘露水」の初の海外展となります。国立台湾美術館と東京藝術大学との交流も「台湾の土、自由の水:よみがえる黄土水いのちの芸術」展から始まり、当時、東京藝術大学の熊澤弘教授、村上敬准教授、岡田靖准教授が展覧会やシンポジウムに招かれ、研究発表を行った際に台湾の人々から大きな反響を呼びました。これらの経験や、黄土水が1915年から1922年まで東京美術学校に留学していたという事実と相まって、黄土水の作品を母校に持ち帰って展示する事が両者の間で決定されました。

国立台湾美術館の陳貺怡館長は、

「黄土水は1915年から1922年まで東京美術学校で学び、この歴史が100年後の今日の展覧会を促しました。彼は木彫を基礎に、西洋の彫刻技術を学び始め、当時日本で非常に流行していた西洋の現代彫刻家ロダンの影響を受けた作品は、独特の個性と生命力を表現しています。また、師である高村光雲の影響も受け、台湾の地域意識を反映した作品も制作しました。今回の展覧会では、黄土水の作品を改めて整理・研究するだけでなく、当時の日本の芸術界が西洋文化の衝撃に直面した際に、どのようにして地域の特色を保とうとしたのかについて、より深い議論を展開しています。」と述べました。

国立台湾美術館がキュレーションした「黄土水エリア」では、黄土水の作品10点と関連資料が展示されています。(国美館提供)

日本衆議院議員の盛山正仁氏は、特別に夫人を通じて李遠部長に祝賀の手紙をお渡しされました。手紙の中には、黄土水は台湾人として初めて東京美術学校に入学し、官展に入選したことなど、台湾近代美術の先駆者として活躍された彫刻家として知られております。本展では、彼の国宝作品『甘露水』をはじめとする作品を母校の東京芸術大学に迎えて展示されますが、あわせて、黃土水が学んでいた大正から昭和初期の洋画・彫刻などの作品が展示されます。

黄土水の隆盛:日本の大正時代(1912~1926)芸術における和洋融合の時代

黄土水(1895-1930)は台北で生まれ、台湾人として初めて東京美術学校に入学し、西洋近代彫刻家として初めて帝展に入選、日本の皇室や台湾の政財界からも高い評価を受けました。黄土水と日本美術の深いつながりは、今回の国立台湾美術館と東京藝術大学の共同開催をとりわけ象徴的なものにしています。

黄土水は1915年から1922年まで東京美術学校で高村光雲の教えを受け、その後1923年に東京にアトリエを構え、1930年に36歳で早世するまで活動しました。黄土水が東洋の精神と西洋の技法の融合について研究に没頭してきた10数年間、明治末期から大正初期にかけての日本社会は、新旧の価値観が影響し合いながら融合し、革新と継承が行われる世代交代の時期であり、美術界に様々なジャンルが花開いた時代でもあって、これらの背景が彼の創作の糧となっていました。

本展では、黄土水の恩師である高村光雲とその息子の高村光太郎、表現方法が黄土水に近い平櫛田中、表面的な造形よりもテーマや感情表現を重視した北村西望と荻原守衛、台湾の学生たちに大きな影響を与えた日本の洋画家・藤島武二、同じく東京美術学校で学んだ台湾の同級生である李梅樹、陳植棋、陳澄波、李石樵、郭柏川、顔水龍など、東京美術博物館の所蔵品から20世紀初頭の彫刻と絵画作品が展示されます。ご来場の皆様が黄土水の作品と同時代の芸術家との対比を楽しみながら鑑賞することで、当時の東京がどのようなものであったかを感じ取ることができ、黄土水の芸術をより深く理解されることを期待します。

「黄土水とその時代」展の会場風景。東京芸術大学美術館所蔵の20世紀初頭の彫刻や絵画。(国美館提供)

不朽の黄土水:台湾の近代美術における先駆者

今回の展覧会において国立台湾美術館が企画した「黄土水特設コーナー」では、国立台湾美術館所蔵の《甘露水》、《釈迦如来》、《山本農相寿像(山本悌二郎氏)》の3点と、個人蔵から快く貸与いただいた《ガチョウ》、《歸途》、《鹿》などの代表作7点を含み、黄土水作品10点と関連する文献が展示されます。なかでも《甘露水》は、1921年の第3回帝展、1922年の「平和記念東京博覧会・台湾館」で入選したことがあり、その歴史的意義は明らかなものです。この作品は、黄土水が西洋彫刻の技法に精通していることを表しているだけでなく、アジアの女性像や観音様の神聖さなど、東洋の美学と台湾の郷土精神を最大限に引き出している事が特徴であり、言葉にせずとも、誰もが作品を通してその美的価値を直感的に感じることができる傑作であることは間違いありません。

黄土水の作品〈釈迦如来(釈迦像)〉(国美館提供)
黄土水の作品〈水牛群像(帰途)〉。(国美館提供)

黄土水が日本にいた期間は、明治維新以降の近代化の時代と重なっており、このような歴史の流れの中で、黄土水は西洋と日本の芸術を学びつつ、台湾の特色を生かした芸術創作を切り開こうと力を注いできました。動物や人物像から仏像、木彫や青銅から大理石彫刻まで、創作に捧げた短くも輝かしい生涯の中で、彫刻技術を追求するだけでなく、彼の作品に込められた台湾文化の自覚性は、後世の芸術家たちに多大な影響を与え、台湾の近代美術発展における先駆者となっています。

学術シンポジウム:黄土水とその時代――日本と台湾の近代美術史をたどる

展覧会の開幕当日(6日)午後には、東京藝術大学美術館で「黄土水とその時代――日本と台湾の近代美術史をたどる」と題した学術シンポジウムも開催されました。シンポジウムでは、本展のキュレーター国立台湾美術館の薛燕玲、東京藝術大学美術館の村上敬准教授、東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学の岡田靖准教授がそれぞれ講演を行いました。

また、国立台湾美術館の館長・陳貺怡もシンポジウム開幕挨拶で「黄土水は、台湾本土の意識を反映した作品を数多く創作し、二十世紀初期の台湾の美術界に多大な影響を与えました。また、多くの台湾芸術家たちに日本留学への道を切り開きました。」と述べました。薛燕玲は講演の中で、黄土水の早逝により彼の作品や資料が台湾や日本各地に散逸してしまったことに触れ、4年前から国立台湾美術館のチームと国内外に散らばった資料を収集し、黄土水の芸術史・創作の特徴、そして留学時代の足跡を丹念に整理してきたと語りました。村上敬准教授は、黄土水が日本で活動していた時期に、当時の日本の重要な芸術家たちにどのような影響を受けたのか解説しました。岡田靖准教授は、明治以降の新たな彫刻表現について議論しました。3名の専門家による深い洞察は、多くの芸術ファンや学術関係者を引き付け、展覧会の学術的および文化的な価値を一層高めました。展覧会期間中、多くの日本の来場者が黄土水の芸術的価値とその偉大な業績に触れていただくことを期待しています。

展覧会の開幕当日(6日)午後には、東京藝術大学美術館で「黄土水とその時代――日本と台湾の近代美術史をたどる」と題した学術シンポジウムも開催されました。(国美館提供)
「甘露水」開封完了。左から村上敬キュレーター、国立台湾美術館の陳貺怡館長、薛燕玲キュレーター、東京藝術大学の熊澤弘教授と国宝の記念撮影。(国美館提供)

9月5日の関係者内覧会では、100人以上の文化・芸術関係者が招かれ、その中には、黄土水の御子孫の幸田頼子氏、台湾美術史専門家の李欽賢教授、黄土水の作品《山本悌二郎像》の復刻を支援した在日台湾系舞踊家の若林素子(張素真)氏、実践女子大学文学部美学美術史学科の児島薫教授、元東京藝術大学美術研究科文化財保存学教授の木島隆康氏、日本国宝修理装潢師連盟副理事長の半田昌規夫妻などが参加されました。国立台湾美術館はこれらの来賓に感謝の意を込めて、展覧会特製ノートや昨年出版されたアルバム『台湾の土・自由の水:蘇る黄土水 いのちの芸術』、東京藝術大学美術館が制作した展覧会図録を贈呈しました。

「黄土水とその時代」の開幕式におけるご来賓との記念写真。(国美館提供)

文化部の李遠部長(文化相)は開幕式で挨拶し、

「就任から100日目に、日本を初の海外訪問国に選んだ理由は、日台文化交流という理由だけでなく、100年前に黄土水氏を育てた東京芸術大学に彼を伴って戻ることが重要だと考えたからです。『甘露水』は、海から昇る台湾のように、自信と慈しみに満ちた眼差しで世界を見つめています。台湾は、西洋や日本などの文明との交わりの中で「自分とは何か?」を常に模索してきました。そのため、文化部は2017年から台湾美術史再構築プロジェクトを通じて、台湾らしい本当の姿を見つけたいと考えています。今後も台湾と日本とが手を結び、両国の文化を世界へと広げていくことを期待しています。日台間には国交はありませんが、国交がある国よりも緊密な関係を築くことが必ずできるでしょう」と述べました。

黄土水について

黄土水(1895-1930)は、台湾人として初めて東京美術学校で学んだ芸術家であり、1910年から1930年までの台湾美術界を代表する人物です。黄土水が形成された時代背景を忠実に再現するため、東京藝術大学が所蔵する20世紀初頭の彫刻や絵画作品から選りすぐりを48点を集め、高い誠意を示しました。これにより本展では「黄土水特設コーナー」が設けられ、国立台湾美術館より選出された黄土水作品10点と関連する文献が展示されます。黄土水の作品に、彼の恩師である高村光雲や、藤島武二、北村西望、朝倉文夫、高村光太郎、荻原守衛といった、当時日本の美術界で活躍していた芸術家たちの作品と共に展示することで、当時の東京の芸術的雰囲気が再現され、まるで20世紀初頭の日本と台湾における美術史が凝縮されたような展覧会となることを期待します。

国立台湾美術館について

台湾の台中市西区にある国立台湾美術館は、1988年に開館し、総面積が約10ヘクタールに及ぶ台湾最大の公共美術館です。国立台湾美術館は、視覚芸術を主軸に、台湾の近代、現代美術の所蔵、研究、展覧、教育推進に力を注いでおり、来館者に専門性が高く豊かな鑑賞環境を提供しています。

東京藝術大学について

日本の東京都台東区上野公園にある国立東京藝術大学は、1949年に東京美術学校(現美術学部)と東京音楽学校(現音楽学部)が統合して設立され、美術や音楽に関する14の学科を擁しており、美術と音楽分野における芸術家の育成に力を注いでいます。

「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」

会期:2024年9月6日至10月20日

会場:日本東京藝術大学大学美術館

主催:東京藝術大学、国立台湾美術館

キュレーター:村上敬、薛燕玲

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