2023年第二回馬祖ビエンナーレがこのほど閉幕しました。6か国の芸術家が馬祖4郷5島に70点の作品を展示し21のパフォーマンスを行いました。新型コロナウイルスによる規制が緩和されたこともあり、住民が1万人にも満たない馬祖に会期51日間に延べ32,000人が訪れました。馬祖ビエンナーレは、中華文化総会と連江県が主催する、台湾初の島巡りアートフェスティバルです。かつて国民党と中国共産党による冷戦の最前線だった馬祖には、台湾本島とは全く異なる風景や文化があります。ポストコロナでの第二回ビエンナーレには大勢の国外アーティストが参加したことで、馬祖の物語は国際的に知られることとなりました。蔡英文総統も馬祖ビエンナーレ期間中に島を訪れ、26拠点の坑道で、戦地のイメージをテーマとした作品を鑑賞しました。
連江県は70人以上のボランティアを動員、馬祖の14集落からも45グループ、700人以上の住民らが参加しました。また馬祖での芸術教育の普及を図るため18の地域共創ワークショップを開催し、馬祖の8つの小中学校から800人を超える児童生徒、教師らが参加しました。また、数回の専門的な教育ツアープログラムも行われ、1000人以上の馬祖の児童生徒らが自分たちの島について学びました。そして今回も、ユニクロや台湾ファミリーマート、臺虎精釀TAIHU BREWING、馬祖酒廠MATSU LIQUORFACTORYなどの企業とコラボレーションしたビエンナーレ限定商品を販売し、大きな話題となりました。
高橋匡太氏「雲の故郷へ」制作ワークショップのドキュメント映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=8VicojJ0gR0
馬祖ビエンナーレには国内外のアーティストが参加し、島の緊迫した地政学的関係や豊富な軍事文化遺産を現代の政治状況の中でさまざまな視点から解釈した作品を制作しました。51日間の会期中、AP通信、フジテレビ、AFP、ニューヨーク・タイムズ、テレビ朝日、共同通信社など30を超える国内外のメディアが島を訪れ、かつての戦場からアートの島へと変貌を遂げた馬祖を取材しました。海外メディアの現地取材を通して台湾の自由と民主主義的価値が明らかになり、クリエイターと島民らの努力により馬祖の文化的魅力が世界に発信されました。
テレビ朝日の取材班は馬祖列島へ渡り、戦争遺跡であるトーチカを舞台にしたアート作品や軍艦を改造したクジラの大型インスタレーションを紹介。中国大陸から約20キロに位置し戦闘の舞台となった馬祖の印象が、アートによって一変したことを報道しました。フジテレビは、馬祖は台湾にとって重要な第一防衛線であり、FNNが取材した12日も馬祖を含む3カ所の離島で大規模な軍事訓練が行われていたと報じました。AFPも「台湾の戦時中の建造物が島の美術館に変身」と題し、馬祖におけるアートの触媒的効果を報じました。
CNNは「台湾の極秘発電所がアートスペースとして初公開」とし馬祖の文化や戦場の最前線だった歴史を探りました。香港の英字紙、南華早報(South China Morning Post)は「アートの島に変身した旧軍事島」と題し、軍事の最前線だった馬祖の緊迫した雰囲気をアーティストたちがどのように表現しているのか、そして島をアート、観光、平和の島に変えたいという人々の願いを紹介しました。RFA(ラジオ・フリー・アジア)は現在の馬祖を「台湾離島における新章」と定義し、当時共産主義勢力に対抗した軍事的最前線が、現在は観光客が訪れる観光スポットとなっていることを紹介しました。日本の女性向けライフスタイル誌「CREA」では、『秘境「馬祖列島」がアートの島へ』と題し、馬祖と台湾本島の異なる文化的景観を浮き彫りにし、作品を通して島の輪郭を知ることができるとしています。
第二回馬祖ビエンナーレでは、6か国から海外アーティストが参加し馬祖で作品を制作しました。また日本、フィンランドの国際キュレーターが馬祖を訪れ交流し、国際専門家によるシンポジウムも5度開催しました。実際に馬祖ビエンナーレを訪れた、フィンランドのヘルシンキ・ビエンナーレの共同キュレーター、ピルッコ・シッタリ氏とアーティストのユッカ・ヤルビネン氏は、山隴排練場での作品「収信快楽」が特に印象的だったと述べました。この作品は、アーティストの愛情や馬祖に対する思い、そして思いやり、望み、愛、コミュニケーションなど馬祖のすべてを語っており、馬祖の背景と現代の生活について知ることができる美しい視点が表現されているとしています。また馬祖ビエンナーレが単なるアートイベントではなく、地域発展計画の一環であり、追求価値のある目標であると評価しました。
長年に渡り台湾と日本を深く観察してきた文筆家、栖来ひかり氏は、昨年の一回目は、「まずは馬祖という美味しいワインを発見した」という感じでした。素晴らしい奥行きと、非常に高いポテンシャルを持つ馬祖という特別な「場所」、しかしまだ十分に生かせているとはいえませんでした。第二回は、その馬祖が持つ「場所の感覚」を有効に引き出した作品や取り組みが多く見られ、「馬祖のワインが開いた」という感じがしました。また、地元の住民の方々の参加が増え、芸術島を通して馬祖という土地が彼らの手に取り戻されて行く感じを受けました。これからあと三回、馬祖という美味しいお酒がどのように発酵していくのか大変楽しみに、これからも足を運びたいと思っていますと、期待を寄せました。
日本台湾交流協会の服部崇副代表は馬祖訪問後、文化や芸術には時代や国境を超えて共感を生み出し、人々を結びつける力があると話しました。そして期間中、5つの島に設置された作品を通じて、馬祖が持つ魅力がより多くの台湾や日本の人々に届くと信じていると述べました。
連江県の王忠銘県長によりますと、2020年の「芸術島」構想立ち上げ以来、中華文化総会と連江県は馬祖文化ガバナンスのビジョンを切り開くため10か年計画に取り組んできました。2022年の初回は「島嶼釀」をコンセプトとし、アートをきっかけに教育、建築、デザインなど軸が多面的でした。2023年の第二回馬祖ビエンナーレは「生紅過夏、芸術の醸成」をテーマに、人々が芸術を体感することを重視し、一回目の経験から県の各部署が省庁の垣根を超えて協力し県の政策目標として芸術島を開催し、文化ガバナンスを成功させました。同時に芸術教育も強化し、馬祖の子供たちが小さい頃から、アートを彼らの生活に根付かせていきます。次回の馬祖ビエンナーレは、より多くの改修スペースをオープンにする予定です。地域の文化的要素を継承し深化させることで、世界的な文化的魅力を持つ島にしていきます。
第二回馬祖ビエンナーレは11月12日に閉幕しました。600通のアンケートを通じ、馬祖ビエンナーレが軍政の歴史、戦地建築、閩東語(びんとうご)、文化を理解するのに役立ったという感想を多くいただきました。島内外を問わず95%以上の人がビエンナーレの継続を支持しており、90%以上の人がビエンナーレの開催が地域の発展・活性化や馬祖の地域文化に対する理解促進に繋がると考え、次回の開催を支持しています。
今後も10点以上の作品が常設展示となります。今後はイベント開催に合わせて不定期に公開される予定で、アートが馬祖の日常の風景の一つになっていきます。そして島博物館のビジョンを継承し、馬祖ビエンナーレを国際的な文化的魅力を持つ島にしていきます。
常設作品一覧:
・南竿:母の船、芸質教室、窓の外の風景、積み重なる地形、OPEN-老酒ガラスの家、想像(Imagine…)、収信快楽(嬉しい便り)、海こそ我が陸、Art Corner Onthe Sea、棄巣
・東莒:大船帰港-【士官長のリサイクルボートハウス】
・西莒:18哨-新芽
・東引:町役場放送、粼聚、守護、遠いサーチライト、群星
最新情報は公式サイトをご覧ください。
・開催期間:2023年9月23日(土)〜2023年11月12日(日)
・公式サイト:https://matsubiennial.tw/
・Facebook:https://www.facebook.com/matsubiennial
・Instagram:https://www.instagram.com/matsubiennial
・Youtube: https://www.youtube.com/@user-uc2vk2px4n
・主催:中華文化総会、連江県政府
・特別後援:台湾文化部、台湾交通部、台湾デジタル発展部、台湾交通部観光局、国家発展委員会、陳雪生議員事務所、連江県議会
・総合プロデュース:社計株式会社 呉漢中
・総合ディレクター:左脳創意 程詩郁
・総合運営:白日夢創意 劉慧婷